記者は見た!(のか?)7

いよいよ明日、12月23日、「コツブ桃山城の女子プロ王座決定戦」が開催される。
直前の会場の様子をお届けするべく、記者は徳島から東京へと飛んだ。

普段はギャラリーとして使用されている清澄白河「SNAC」が、
すっかり四角いジャングルと化していた……!

しばらく潜入取材を続けたかったのだが、
「SNAC」のスタッフに発見されてしまい、追い出されてしまった。

一体、コツブ桃山城の女子プロ王座決定戦とは何なのか?
1週間に渡って取材を続けてみたが、謎は深まるばかり。

とにかく、少しでも興味を持ったあなたは、ぜひ明日、会場に足を運んでもらいたい。
昼の回にはまだ余裕があるようだし、夜も若干枚当日券が出るとのことである。

昼の回、夜の回とも、記者は会場に足を運ぶつもりです。

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力の有り余った小劇場の強者女優達が、根拠のない意地とプライド、
女子プロ王座をかけて戦ってみよう!!というこの企画。
はたしてこれは女子プロなのか、演劇なのか、コントなのか…
何が起こるかは当日来てみないと、わからないよ。

出場者:
コツブ桃山城 高山玲子 / 島田桃依
マームとジプシー 伊野香織 / 召田実子
kivikick from ゲロマザーファッカーズ 菊池明明 / 木引優子
ロマンスメイツ 森翔太 / 八木光太郎

レフェリー:危口統之 (悪魔のしるし)
実況:藤原ちから
コントシナリオ提供:藤田貴大 (マームとジプシー)

ゲスト解説
15時の回:橋本倫史
19時の回:徳永京子

日時:
12月23日(金・祝)
14:30 OPEN / 15:00 START
18:30 OPEN / 19:00 START

会場:SNAC acceess
料金:前売り・当日/1,500円

記者は見た!(のか?)6

「コツブ桃山城の女子プロ王座決定戦」まで2日と迫った今日、
キビキック from ゲロマザーファッカーズから1通のメールが届いた。

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森の写真がいちいちムカつく!
まぢゲロ!ファックファック!
マザファック!!
ゲロマザーファック!!!!!!
キルユー!
こんなんで海外からの通信費使わすなマザファッキン!!

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森翔太氏の嫌われぶりは、記者の予想をはるかに上回っているようだ。

一刻も早い帰国が待たれるキビキック from ゲロマザーファッカーズだが、
ロンドンを発ったふたりは日本に帰国せず、さらに別の国へと旅立ったようだ。

彼女たちが向かったのはアラスカだ。

「アラスカにきています」

「寒いです」

極寒の地に身を置くことで、心身ともに鍛えようという算段であろう。
北海道ではなく、わざわざアラスカに出かけてトレーニングに励む、
それが旅行好きのタッグ、キビキック from ゲロマザーファッカーズなのである。

中には「写真に『警告』って文字が写ってるし、換気扇も見えるし、
浴室で撮ってるだけじゃないの?」などと訝しがる人もいるかもしれないが、それは素人考えというもの。
日本製品は今や世界各国で使われているのだから、アラスカで日本語を見かけても何の不思議もないのだ。

さきほどの写真と一緒に添付されていたこのファイルを見てもらいたい。


見ているだけで凍えそうになるこの写真は、まぎれもなくアラスカの凍土だ。
決して冷凍庫の霜などではないのだ……。



王者であるコツブ桃山城も、トレーニングに余念がない。
都内某所の公園に、高山さんの姿があった。

「私は人ごみが嫌いなので、トレーニングは近所にある自然の中で行ないます」

「こうしてジョギングするところからトレーニングは始まります」

「からだが暖まったところで、ウェイトトレーニングです」

ところで、今日の東京都内の最高気温は8.5℃。
こんな寒い日にこの格好で、風邪を引いたりしないのだろうか?

「たしかに、日本の冬は寒いですね。
『タイのジャングルに帰りたいなー』なんて、ふと思ったりしてしまいますね」

故郷に思いを馳せるあまり、木に登ってしまった高山さん。
こうした姿を見るにつけ、彼女の父のことを思い浮かべてしまうのは記者だけだろうか?

ところで、タッグパートナーである島田さんは一緒ではないのだろうか?

「島田さんは基本的に寒がりなんで、室内トレーニングです」
すぐ近くにある体育館をのぞくと、イメトレを行う島田さんの姿が。

過去の名試合を観ることでアドレナリンを分泌させつつ、
アンパンを立て続けに食べることでウェイトアップも果たす。
王者に死角はない……のか?

記者は見た!(のか?)5

昨日はロマンスメイツの森翔太氏の半生を振り返った。
そこで紹介した森氏のブログが波紋を呼んでいる。

名指しで批判されたコツブ桃山城の島田桃依さんから、
記者のもとに怒りの電話がかかってきた。

「なんだあの記事は! ロマンスメイツの森、ぶっ潰してやる!
リングにあげて叩きつぶしてやる! ぶっ殺してやる! 死んでも墓にクソぶっかけてやる!!」

電話の向こうでパワーホールが鳴り響いている……。

ところで、森氏はどうやら最近誕生日を迎えたらしい。

この写真は、悪魔のレフェリー・危口統之氏のミニブログTwitterに投稿されたものだ。
公正であるべきレフェリーが特定の選手の誕生日を祝うとは、由々しき自体である。

聞けば、ロマンスメイツのふたりが主戦場としている「悪魔のしるしプロ」は、
他でもない、危口レフェリーが主宰する団体だという。

ひょっとすると、ロマンスメイツと危口レフェリーは裏で手を組み、
王座を手中に収めようとしているのではないか?

真相を確かめるべく、危口レフェリーの自宅を尋ねたが、
チャイムを鳴らしても反応はなかった。

危口氏の自宅の壁面にはビッシリと文字が書かれている。

「とりあえず数百年後の演劇では職業俳優や舞台監督などとっくに不要になっているに違いない」
「むろん演出家などもっと早くに絶滅する 先ずが俺が死滅するからみんな後に続け」

謎の言葉を丁寧に探っていくと、今回の大会に関係ありそうな文を発見した。

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年末の何かと物入りな時期に無茶な依頼をされ非常に困窮している。
自分は横浜市民であり、会場のある清澄白河まで出かけるのにも多大な金銭と時間を必要とする。
遠くからわざわざ来れくれたレフリーに誠意ある態度を示してくれるチームには、情のこもった判定で恩義に報いたい。
なお、誠意の形式については、金属製よりも和紙で現されたものの方が好ましい。

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謎である。
金属製の誠意とは、和紙で現された誠意とは、一体何を意味するのだろうか?
しかし、危口氏が何か企んでいることは間違いがなさそうである……。


「非常に困窮している」という危口レフェリーと対照的なのが、
キビキック from ゲロマザーファッカーズのふたりだ。

記者のもとに送られてきた写真を見てもらいたい。

優雅である。
「ロンドンの郊外で庶民の生活を体験しています。素敵なガーデンでティータイムです」
写真にはそう書き添えられている。

自分もロンドンで優雅な午後を過ごしてみたい……。
記者は本紙デスクにキビキック取材のためロンドン出張を申し込んだが、にべもなく断られてしまった。
デスクはケチなのだ。デスクはさらに、あろうことか写真にまでケチをつけ始めた。

「これさ、コーヒー淹れようとしてるよね?
 ロンドンでティータイムって言ったら紅茶でしょ?
 このふたり、ほんとにロンドンに行ってるの?」

なんと頭でっかちなデスクだろう!
ロンドン市民だって、紅茶ばかり飲んでいるわけではないのだ。

二人は間違いなくロンドンにいる…はずだ……。
しかし、大会は3日後に迫っている。一刻も早い帰国が待たれる。

記者は見た!(のか?)4

ロマンスメイツの森翔太は、生まれながらにして話題を呼ぶ男だった。
その年に鳥取県内で生まれた赤ちゃんの中で、一番重い体重だったため、
生後一ヶ月にして鳥取新聞にその名が刻まれることになったのである。

産後一週間で歩いてみせた森は、親戚関係者一同から(何かしらの)神童と呼ばれていた。
キリスト系の幼稚園だったが、なかなか教派になじめず、毎日キリスト系の他園児たちと争いをする。
ポケットにいれた石と(相手の口と鼻をふさぐようの)粘土を駆使して重傷を負わせ、PTA問題に発展する。

小学校に上がっても争いの日々は続く。
配下においた部下を使って、人間将棋(人を将棋の駒にする)という遊びを発案して日々楽しむ。
放課後は女子と野球拳を楽しんでいたため、ここでもまたPTA問題に発展することとなる。

中学に上がる頃には、争いの日々にも飽き、真面目に生きようと決心。
芸能人に憧れジャニーズに応募するも落選し、さらには同級生の女性が自分の陰口を叩いている現場に遭遇してしまう。

この時期を境に、彼の人生は転落の一途を辿っていく。

彼が入学したのは、県内でも有数の両道の進学校だったが、
森少年は「文武両道」を掲げる校風にそむき、部活もせず、授業が終わるとすぐに帰宅する日々を送る。

彼が夢中になっていたのは、映画の世界だった。

シュワルツネガー、デニーロ、タランティーノ
ミュータントタートルズバットマンスパイダーマン……。
スクリーンの世界や、一連の不良漫画に強く影響を受けた森少年は、
ナイフ、ハサミ、十手、まきびし、ブーメラン、スライム、着火マンなど、様々な道具を常時携帯していた。

彼と同じクラスだったという男によれば、「森君が会話しているところを見たことがない」という。
「森君がいつも変な道具を持ち歩いているということは、クラスの皆が知っていました。
キレると何をされるかわからないし、誰も森君に話しかけることはなかったですね。
休憩時間になるといつも音楽を聴いてたみたいです。よくB'zを聴いていましたね」

そう、森少年が唯一興味があったのは音楽であった。
彼は鳥取を離れ、静岡県の芸術系の大学に進んだものの、
入学後すぐにひきこもり、自宅で段ボール工作に明け暮れる日々を過ごす。
卒業後、奇跡的に(主に段ボールを扱う)総合商社に就職が決まるも、一年と続かず退職してしまう。

あてもなく上京した森翔太は、スーパーでアルバイトを始めた。
友達もできず、都会の喧噪の中で精神的にまいってしまった彼は、
公民館でひらかれていた無料悩み相談に出かける。
そこで知り合ったのが、同じく相談にきていた八木光太郎だった。

プロレス好きな八木光太郎と話しているうちに、森は幼少期期に送っていた争いの日々を思い出す。
レスラーを募集していた「悪魔のしるし」という団体の道場を見学に訪れたのは、26歳の春のこと。
興味本位の軽い気持ちで見学に訪れた森だったが、そのまま強制的に入門させられ、すぐにプロレスデビューを果たす。

素人丸出し&基本的に反則しか使わないスタイルを続けていた森は、そこそこ人気を博す。
調子に乗った森は、プロレス界では有名な団体「青年団プロ」のレスラー募集に応募する。
余裕で受かるだろうと思っていた森だったが、書類審査であえなく落選。
根が僻みっぽくできている森は、「青年団プロ」を、ひいてはこの業界で活躍する連中全般に恨みを抱き始める。

いつも専門誌や業界人からチヤホヤされている人間たちに、復讐するチャンスはないかーー。
森が目をつけたイベントが、この「コツブ桃山城の女子プロ王座決定戦」だった。

青年団プロ」に所属するレスラーである島田桃依や木引優子、
近年人気を博している「マームとジプシープロ」のリングに上がっている伊野香織、召田実子、高山玲子が参加するこのイベントは、
森にとって格好の標的だった。
思春期以来こじらせている女性に対する怨みもここで晴らしてやろうと目論んでいるようだ。

しかし、ここに一つの疑問が生じる。
「女子プロ王座決定戦」に、男が参加できるのだろうか?

他の出場者たちにこの疑問をぶつけてみたが、
「私に聴かれてもよくわかりません」
「どうでもいいです」
「森って誰ですか?」と、有力な答えは得られなかった。

森翔太本人に直撃取材をしようにも、
唯一の連絡手段であったアメーバピグもログインしていないようで、コメントを得られない。


(かつての取材風景。一ヶ月前までは、コンタクトが取れたのだが……。)

調布の森(アメーバピグでの森の呼び名)は一体どこに行ってしまったのだろう?
途方に暮れながら、「調布の森」というキーワードで検索をしてみると、一件のサイトがヒットした。

http://soundcloud.com/morishowta

このアイコンはまぎれもなく調布の森、いや森翔太のものだ。
再生ボタンを押すと流れる歌声も、殻に閉じこもったポエムも、森翔太そのものと言ってよい。
はたして森は、ネットの世界を抜け出し、会場に現れることができるのだろうか……?

記者は見た!(3)

日曜日の昼下がり。
家族サービスに勤しんでいた記者のケータイが鳴った。

「大事な話があるんで、うちにきてください」
声の主は、コツブ桃山城の島田桃依さんだ。

何か特ダネが聞けるのかもしれない。
嫁に罵られながらも島田さんの家に駆けつけると、
彼女は一枚の写真を手に涙を流していた。

「おなすクンです」

どうしてウサギに「おなす」という名前をつけたのか。
いや、それよりも、このウサギがどうしたというのか?

「私の可愛いペットなんですけど、逃げ出しちゃって……。
 私の尊敬する、「放浪の殺し屋」と呼ばれたプロレスラー・ジプシー・ジョーそっくりで、
 すぐに放浪の旅に出ちゃうんです」

ジプシー・ジョーといえば、コツブながらも無類のタフネスを誇った往年の名レスラーである。


「あの子は私にとってガードマンのような存在なんです。
あの子がいないと、試合に出られるかどうか不安で……。
はっ、ひょっとしたら、今度対戦するマームとジプシーチームが、
私を動揺させるために連れ出したのかもしれません。
マームとジプシー……ジプシー・ジョー……おなすクン……何かつながりがあるのかしら……」

すっかり気が動転した様子の島田さんの家をあとにし、
駅へと歩いていると、季節感のない装いをした女性が歩いてきた。
キビキック from ゲロマザーファッカーズのふたりだ。

「ちょっとだけ旅行にいってきまーす」


旅行好きのふたりは、わずかな休暇を見つけては旅行に出る。
今回の大会に出場を決めたのも、賞金を獲得して旅行に行くためだと語っていた。

しかし、大会は5日後に迫っているというのに、
旅行になんか行っていてだいじょうぶなんですか……?

そう尋ねた瞬間。

「出る前に負けること考える馬鹿がいるかよ!」
「絶対負けないからな!」

激しい剣幕で罵られてしまった。
彼女たちはきっと、ただの旅行に見せかけて、トレーニングに励むに違いない。
ビッグマッチが近づくたびにサイパンに出かける、あのレスラーのように……。

記者は見た!(2)

記者のもとに、2枚の写真が届けられた。
稽古場を公開せず、行方をくらましていたマームとジプシーチームの写真だ。

この写真を見てほしい。

大蛇である。グルグル巻きである。
巻かれている女性は、そう、召田実子さんだ。

現場に居合わせた人によれば、
召田さんは「23日に向けて、極限まで自分を追い込んでいるんです」と語っていたようだ。

蛇に巻かれることが、一体どんな形でプロレスに繋がるのだろうか?
というか召田さん、こんなに髪が長かったっけ?
謎は深まるばかりだ。

召田さんのタッグパートナーである伊野香織さんの写真も、謎に包まれている。

大仏である。おそらく鎌倉であろう。
念仏大使の異名を持つレスラーは存在するが、
そのレスラーは四国でお遍路をしながら修行を重ねていたはずだ。

江の電の最寄り駅から徒歩7分ほどでたどり着ける鎌倉大仏を前に、
彼女はいったいどんな修行をしているというのだろうか?
まさか昔の観光写真などということはあるまい……。

 
王者であるコツブ桃山城のふたりは、
練習のあと、都内某所でタイカレーとビールを煽っていた。

今日の議題は、23日に使用する衣装や入場曲の打ち合わせのようだ。
さくさく話が決まっていく。
王者の余裕か、酒が進むに連れて笑いが止まらなくなるふたり。
三者には単に恋バナをしているようにしか聴こえない会話が続いたが、
あれはきっと、何かの暗号に違いない……。

終電を待つホームで、島田桃依さんのコートのボタンがパツンと飛んだ。
島田さんは満面の笑みを浮かべ、「この一ヶ月で、4キロの増量に成功したんです!』と語った。

「わあ、島田さんえらい」と相槌を打つタッグパートナー・高山さんの元に、
一通のメールが届いた。どうやらロマンスメイツの八木さんからのようだ。

「高山さん、すてきですね。おやすみなさい」
そう書かれたメールを見て、口元が少し緩む高山さん。

はたして、ロマンスメイツ・八木さんはなぜこのようなメールを送ったのだろうか?
真相を探っていた記者は、重大な文書を独占入手した。
八木さんの日記である。

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以前、雑誌のインタビューで
コツブ桃山城の島田桃依が自転車で走行中に自分の不注意で転倒し、
鼻を骨折したというあまりにも情けない記事を見かけた。
今度はこの手で奴の鼻をへし折ってやれるかと思うと、顔のにやけが収まらない。

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本来ヒールレスラーであるロマンスメイツは、
王者を油断させて叩きのめす作戦のようだ。

コツブ桃山城の王座防衛に、暗雲が立ちこめてきた……。

記者は見た!(1)

王座決定戦まで一週間。
出場者たちは一体、どんな日々を送っているのか。
記者がその日常を追った。

kivikick from ゲロマザファッカーズの菊池明明は、西巣鴨にいた。
彼女が参加していたのは、アメリカ出身の伝説の白湯イスト、
サユ・ブライトマンが主宰する「おいしい白湯作りのワークショップ」だ。
アメリカの声楽学校で学んだエクササイズに、
ブライトマン独自の手法がの織り込まれたワークショップだという。

会場から出てきた菊池さんを直撃すると、
「いやあ、やっぱりアメリカに惹かれますね〜」と、海の向こうに思いを馳せていた。
「王座を穫って、賞金でニューヨークに行きたいです」

そう、kivikick from ゲロマザファッカーズの二人が王座に挑む目的は、
海外旅行に出かけるための賞金稼ぎなのである。

すっかり旅行気分の菊池さんの手には、食べ残しの菓子パンが。

このわずかな量を残すということは、決戦に向け食事制限を課しているに違いない。
もしかしたら、小食なだけかもしれないが……。

*          *          *

西巣鴨をあとにした記者は、王者であるコツブ桃山城の稽古場へと向かった。
島田桃依さんはダンベルとバランスボールでトレーニングを行っていた。

「愛用のダンベルやバランスボールです。
 握った感触と、お尻の沈み具合やフィット感を大切にしています」

記者の前で実践しようとした島田さんだったが、
15キロのダンベルは一向に持ち上がらない。

「こういう日もありますよ……」
そう語ると、彼女は1.5キロのダンベルでトレーニングを再開した。

「そうそう、これがいつも愛飲しているプロテインたちです。
 飲みやすくておいしいですよ」

隣にいた高山玲子さんが記者に耳打ちする。
「島田さんは形から入るタイプのレスラーなんです。
 だから、トレーニングの事は基本おまかせしてます」

そう語る高山さんは、記者にあるメールを見せてくれた。
送り主は、レフェリーである危口統之氏である。

「宣伝を織り込んでくれたら、贔屓する」
メールには、そう書かれていた。

「確認したら、私だけじゃなくて皆に届いてるみたいですよ。
 噂に違わぬ、悪魔のレフェリーぶりですね。こういう汚い真似は嫌いです」

*          *          *

真相を確かめるべく、記者は危口氏の稽古場を尋ねた。
中へ入ろうとする記者を、危口氏は「またぐな!」と一喝した。

危口氏は、二枚の紙を記者に渡すと、無言のまま扉を閉めてしまった。
一枚の紙には、走り書きでメモが書かれていた。

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・公演前の多忙な時期に無茶な依頼をされ非常に迷惑している
・悪魔のしるし次回公演の宣伝をコント内に盛り込んでくれたチームは
 出来不出来にかかわらず贔屓する
・人前で醜態を晒すことに悦びを感じる俳優などという恥ずべき職業は、
 百年後の演劇ではもう不要とされているに違いない。はやく滅びてしまえ。

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もう一枚の紙は、よく見るとブックカバーのようであった。

記者はAmazonで検索してみたが、このような書籍は存在しなかった。
一体、悪魔のしるしの「桜の園」とは何なのか?
トーキョーワンダーサイト渋谷に出かけるほかに、それを知る手だてはなさそうである……。

悪魔のしるし 次回公演
[SAKURmA NO SONOhirushi]

 
【日程】
2012年
1/6(金) 19:00
1/7(土) 14:00 / 19:00
1/8(日) 13:00 / 17:00 全5回上演
(上演予定時間:90分程度)

【会場】
トーキョーワンダーサイト渋谷
http://www.tokyo-ws.org/shibuya/index.html

【詳細】
http://www.akumanoshirushi.com/